1997-1998年オゾン全量の季節変化

「オゾンホールは南極上空に一年中存在するの?」
答えは「No」です。オゾンの量はオゾンを生成するのに必要な太陽の紫外線や、オゾンを輸送する大規模な風の循環が、季節変化するのに伴って、1年のサイクルで変化していきます。ここではその様子を説明します。

( NASA GSFC)
97年10月5日;南極オゾンホール
左上の図は、人工衛星に搭載されたTOMSという測器によって観測されたオゾン全量のデータを元に、その季節変化を描いたものです。
図の上下方向は緯度で、上側が北半球、真ん中が赤道で、下側が南半球を表します。図の横方向は時間で、1997年の6月から右に向かって時間が進み、1998年の5月までを表します。
図中で黒く抜けているところは、極夜や衛星の軌道修正のため観測ができなかった場所です。オゾン全量の大小は右側の色グラフによって見ることができます。平均的な量(300 DU)のところは黄色で表され、多いところでは緑や赤、少ないところでは青色や紫で表されます。

オゾン全量の分布を見て最初に気付くことは、我々の住む中緯度に比べて、低緯度では年間を通じてオゾンが少ないと言うことです。南の島に行くときには強い紫外線にさらされるので要注意です。
南半球の春、つまり9月(SEP)から11月(NOV)にかけては、南緯70度から南極に近い場所では、ピンク色が広がっています。ピンク色の所では、黄色の場所の半分以下しかオゾンがありません。この時期にだけ、南極のオゾンホールは現れるのです。
北半球の春には、北極では赤色が広がり、逆にオゾンが増えています。これは、北半球ではオゾンを輸送する循環の形が南半球とは異なるためです。

このように、南半球の春には南極オゾンホールが現れ、北半球の春には北極ではオゾンが増加するのが例年のパターンでした。ところが、1997年の3-4月には北半球にもオゾンホールが出現しました。

1996-1997年オゾン全量の季節変化


( NASA GSFC)
97年3月;北半球にもオゾンホール
この図も、上の図と同じく横方向は時間で、1996年の8月から右に向かって時間が進み、1997年の7月までを表します。

北半球の春には、例年と異なり、北極に水色で示されたオゾンの少ないところが広がっています。これが新聞報道などでも伝えられた、1997年に初めて出現した北極オゾンホールです。出現の原因は、南極同様に
北極の極夜の下部成層圏の気温が低くなり、南極オゾンホール発生と同様の過程が起こったためとされています。1998年の春には、上の段の図にあるように、出現していませんが、今後毎年春ごとにどういった展開を見せていくのかが注目されています。

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