九州大学 中層大気科学研究室


研究内容

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(last up date 07/11/12)

中層大気とは


(写真 NASA)
宇宙から見た地球



(イメージNASA GSFC)06年10月の南半球のオゾンホール

 高度約10〜120kmの大気を中層大気と呼びます。 この中層大気の大規模な流れ、すなわち大気大循環大気波動に伴う現象に ついて扱う分野が中層大気科学です。対象分野は、近年話題になっている地球環境問題とも密接に関わっています。例えば、春先の 南極域でオゾンが激減するオゾンホール現象にも、フロンによるオゾン破壊といった化学的要素以外に、 中層大気中の大循環や波動の効果が大きいことが知られています。 また、中層大気はその下にある対流圏(高度約0〜10km)とも密接 な関連があると考えられています。つまり、異常気象や地球温暖化などの気候変動に伴う対流圏の大循環 や波動の変化により中層大気の大循環や波動が影響を受け、逆にそれ以外の要因で生じた中層大気の大循環や波動の変化が、対流圏の 大循環や波動に対しても影響を及ぼすことが明らかになりつつあります。一例として、成層圏(高度約10〜50km)で数日の間に気温が数 十度も上昇するような顕著な現象成層圏突然昇温が、対流圏の異常気象と関係 しているといったことが近年報告されています。

 私たちの研究室では、中層大気中の大循環や波動、さらには、下層の対流圏や海洋、高度500kmにまで及ぶ超高 層大気と中層大気との相互関係について幅広く研究を行っています。このように、地球表面を覆う流体、すなわち 地球流体全体を扱うスケールの大きさが特徴です。同時に、上で述べたオゾンホールに対する大気大循環や 波動の役割、また成層圏突然昇温のメカニズムの解明にも力を注いでいます。人工衛星やロケット、気球などによって得られた膨大な 観測データの解析と、その成果を組み込んだ数値シミュレーションにより、大きな研究成果を上げつつあります。




大気波動


(a)2003年7月(夏季)における北半球10hPa等圧面高度



(b)2003年1月(冬季)における北半球10hPa等圧面高度



(c)2003年7月(冬季)における南半球10hPa等圧面高度

 海と同じように、大気にも「波」が存在します。緯度円に沿った経度平均(すなわち帯状平均)を 平均流といい、「波」とはそれからのずれを表します。 ここでは中層大気力学において重要な"プラネタリー波""重力波"と いう波動について紹介します。
 左図(a)(b)を見ると、夏季の分布は北極の高気圧を中心として等高線が同心円状になっています。それに対し、冬季の分布は北極付近 の低気圧(周極渦または極渦という)と北太平洋付近の高気圧が見られます。
 任意の緯度円に沿って変動を考えると、夏季は変動はほぼ0なのに対し、冬季は経度方向に波数1や2成分の大きな変動を 持つことがわかります。この主に波数1と2成分の波を地球的な空間スケールを持つことからプラネタリー (planetary=惑星)波、または発見者の名前からロスビー(Rossby)波といいます。また、 このような等圧面分布は変動はするが冬を通じて常に存在します。これは波数1や2成分のプラネタリー波が海陸分布やロッキー山脈など の地形によって形成されることを示しています。
 では南半球はどうでしょうか?南半球においても北半球と同様に、夏季は極が高気圧、冬季は低気圧になり、冬季にプラネタリー 波の活動が活発になります。しかし、大規模な地形があまりない南半球では図(c)に見られるようにプラネタリー波の活動は北半球より かなり弱いです。このことは、後で述べるオゾンホールの形成にとって重要な要素となります。
 そして重力波は、重力が主な復元力の波動です。プラネタリー波よりも小規模な空間・時間スケールを持ち、大部分は対流圏中で小規 模地形や対流活動などにより励起されると考えられています。
 中層大気力学では、このような大気波動が平均流との相互作用によって様々な現象を引き起こすと考えられています。



参考書


- 基礎的でわかりやすい-

グローバル気象学
廣田 勇, 東京大学出版会, 1992



- 学部4年の講義で使われています-

基礎気象学
浅井富雄・新田尚・松野太郎, 朝倉書店, 2000



- 学部3年の英語の講義で使われています-

Atmospheric Science: An Introductory Survey
[Second Edition]
John M. Wallace・Peter Victor Hobbs, Academic Press, 2006



-学部4年のゼミで使われています-

An Introduction to Atmospheric Physics
[Second Edition]
David G. Andrews
Cambridge University Press, 2010


- 学生ゼミで使われています-

An Introduction to Dynamic Meteorology
[Fourth Edition]
James R. Holton, Academic Press, 2004



- 学生ゼミで使われています-

Physics of Atmosphre and Climate
[Second Edition]
Murry L. Salby
Cambridge University Press, 2012





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